「30キロを超えてから一人で飛び出して走る練習をしてきて、そのイメージどおりに走れました。」
素晴らしい!
言うだけなら誰でも言えますが、実際にするのは難しいですよね。過去に多くのマラソンのレースを見ましたが、30キロを超えて積極果敢に飛び出していける選手はさほど多くありませんでした。
日々何十キロも走っている一流選手だってみんな怖いのです。「飛び出すのはいいけれど、後でもたなくなったらどうしよう…。」そう思って安全策を取ってしまうのです。やはり、最後はメンタルですね。
ペースメーカーに合わせたり、前を走る人のペースに合わせたりすると走りやすいと聞きます。けれど、他人のペースに影響されるわけです。他人に惑わされない、あてにしないで走れるような練習をして、イメージを描いたとおりのレースをして勝つ。
正に「イメージで勝ってから行く」という勝負でした。
練習とイメージトレーニングの賜物です。
日曜日に、東京オリンピックのマラソン代表選考レースが行われ、女子は一山選手が2時間20分29秒の好タイムで代表を決めました。若干22歳。
30キロを過ぎて外国人招待選手を後ろに残して飛び出し、先頭を一人で突っ走りました。シドニーオリンピックのマラソン金メダリスト高橋尚子さんが、解説で「彼女は前に人が誰もいなくても、自分が設定した記録を目指して走っていますね。」と、言っていました。
「鬼のような厳しいメニュー」のことを「鬼メニュー」、そのさらに上のメニューを「鬼鬼メニュー」と言うそうですが、一山選手は「鬼鬼メニュー」を愚痴ひとつこぼさずにこなすのだそうです。素晴らしい忍耐力。アタマが下がりますね。
そして、レース後のインタビューで話したのが、
「30キロを超えてから一人で飛び出して走る練習をしてきて、そのイメージどおりに走れました。」
練習の時からそのつもりでやる。そして、本番でまったく同じことをやる。
天晴れです。
だからこその好記録。試合をする前から勝っている。選ばれるべくして代表に選ばれたのだと思いました。
一山選手に限らず、若いスポーツ選手のメンタルがものすごく強くなっているのを感じます。一時は往年の名選手が「最近の若い選手は…」などと言っている時期がありました。練習では素晴らしいけれど本番に弱いと。
昔は何でも「根性」でした。ハードな練習を「根性」で乗り越えられる選手だけが一流になれました。
続いて科学的なフィジカルトレーニングが取り入れられるようになりました。栄養状態が良くなり体格が良くなって、技術面でも筋力面でも海外の選手と比べて見劣りしないようになってきました。でもまだ「根性」で語られていました。
最近の若い選手はきっちりとメンタルトレーニングをしていると思われます。ここ一番で実力どおりのパフォーマンスを発揮できる選手が増えています。
いろいろな場面を想定して準備し、決めたことを本番できっちりやる。暑くても寒くても、雨が降っても風が吹いても、どんな局面になったとしても自分でレースを組み立てることができる。
「こんな日にオリンピックを決められたらかっこいい」
と、言って実現する。
あなたも「イメージで勝ってから行く」勝負をしましょうね。
まじめ・前向き・一生懸命が、もっと輝くように。