「部下が考えない」
「自主的に動かない」
よく聞く言葉です。でも、研修先に行って話をしていると「あれ?」と思うこともあります。
・部下が考えたことを頭から否定する
・部下が自主的に動いたことを批判している
せっかく一生懸命部下が考えたのに、
「そんなのダメだ」
と、頭から否定してしまったら、だんだん考えなくなります。
自主的に動いていくらか成果を上げたのに、
「そんな動き方じゃダメだ」
と、せっかくの成果を認めなかったら、やる気がなくなります。
部下が考えたり、自主的に動いたりできるような育て方ができていないのですね。
どうすれば、自主的に考えて動くようになるでしょうか?
1.見本を見せる
上に立っている人には経験があります。知識も豊富です。情報量も多いです。が、経験がない方からすれば、何をどう考えればいいのかすらわからないのかもしれないのです。
「少しは考えろよ!」
と、怒ったところで考えられるようになりませんから、まずは、見本を見せましょう。「こういうやり方をすればいいんだよ」という見本を見せることで、イメージを作ることができるのです。
人に見本を見せるということは、自分自身の振り返りにもなり、学びにもなります。そして、部下の成長にもつながる訳ですから、怒るよりはよほど建設的なやり方です。
2.考え方の型を教える
どんなことにも「型」がありますね。例えば、俳句なら「五・七・五」の17音で作るのが「型」です。私はそれを知っているから言えることです。俳句を始めて読んでみた人は、「何かいい感じのフレーズだなぁ」とは思っても、その「型」に気づかないかもしれないのです。
自分のやり方を見せたとしても、その中から何を学ぶかは相手次第です。
「自分で見つけろ!」
と、言いたい気持ちもわかりますが、改めて「自分はどのような手順で考えているのか?」「何と何と何を大事にしているのか?」などを考えて体系化すれば、次の指導にも活かせますね。それは、先々の手間を省くことになります。
3.「考えた」ということを誉める
見本を見せ、「型」を教えたら、いよいよ本人に考えさせてみましょう。
大事なことは、「考えた」ということをまず誉めるということです。初めてやったことが上手なはずはないのです。
「よく考えたね」
「初めてにしては上出来だよ」
「教えた方を守れているね」
など、の一言があるかないかで、本人が受ける印象が全く変わります。大人になっても人は誉められたいのです。まずい点を指摘するのは一言誉めた後です。「ここをこう考えればもっと良くなるよ」というような、次につながる言葉かけをしましょう。
4.考えたことを「動き」につなげる見本を見せる
机の上で完結するものは考えて紙に書けば完成ですが、仕事は考えて動かなければ結果につながりません。「営業電話を100本かける」と考えたとしても、実際に電話をかけて初めて結果につながる訳です。
「こんな風にかけるんだよ」という見本は必ず見せましょうね。目で見て耳で聞いたことはイメージしやすいですから、本人が実際にやってみる時に大きな参考になります。「こんな風にやればいいのか」と思えるような、いい見本を見せてあげましょう。
5.動き方の「型」を教える
見本を見せても、その中のどういう点がポイントかは、初めての人にはなかなかわからないものです。大事なことは押さえるように、教えることが必要です。
・話し始めはこのように言う
・中身はこのような順番で話す
・最後はこのような言葉で締めくくる
たったこれだけのことでも、知っているのと知らないのとでは全然違いますよね。各部分に分けて練習すれば、練習の効果も上がりやすいです。忙しくて練習を見守る時間などなかなか取れないでしょうから、尚更、分けて練習できるように教えてあげましょう。
スポーツの練習でも、いきなりゲーム形式ではやらないですよね。例えば、野球の練習であれば、投げる練習・捕る練習・打つ練習などに分けてやり始めます。上達するにつれて、「捕って投げる」とか「連携する」など高度な練習になります。それと同じことです。
いいイメージを作るために「見本」を見せ、上手になるために細かく区切って「型」を練習する。両方大事なのです。
6.「動いた」ということを誉める
考えて実際に動いたら、「動いた」という事実をまず誉めましょう。上手にできているかどうかはまた別の問題、次の段階なのです。まずはチャレンジしたことを誉める。
「チャレンジしたのか!いいぞ。」
「最初の一言がとても良かったよ」
「あれだけ言えれば上出来だ!」
本人はうまくできたか不安なのです。もしくは、うまくできなかったと落ち込んでいるのかもしれません。そこで、いい点をひとつでも見つけてもらえれば、それが次の動きへの意欲につながります。
そんなバカバカしいことができるか!?
と、思ったとしても、それが人を育てる方法なのです。
あの山本五十六元帥も言っておられます。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、
誉めてやらねば、人は動かじ」
人は、感情で動きます。部下がいい感情を持って仕事ができるように育てましょう。
まとめ
相手の批判をしたくなったら、一度自分に矢印を向けてみましょう。
自分自身の関わり方はどうか?育て方はこれで良いか?
(1)見本を見せる
(2)考え方の型を教える
(3)「考えた」ということを誉める
(4)考えたことを「動き」につなげる見本を見せる
(5)動き方の「型」を教える
(6)「動いた」ということを誉める
人を育てるということは一朝一夕にできることではないですね。あせらずじっくり取り組みましょう。それが、お互いの成長につながります。
まじめ・前向き・一生懸命が、もっと輝くように。