「競技力向上」は、選手本人の幸せのためにあるはずです。
ところが、選手本人の幸せにつながらないのに、
「競技力向上」という謳い文句の上に問題行為が行われることがあるようです。
「競技力向上」を目的に頻繁に「鉄剤注射」を行い、
その影響で選手の健康に悪影響が出たということです。
陸連では、来春までに鉄剤注射を原則禁止にする方針だとのこと。
「鉄剤」はいわゆる薬物ではないので、
ドーピング検査に引っかかるようなものではありません。
経口で摂取するなら問題ないのです。
また、「鉄剤注射」は重篤な貧血に対する医療行為です。
経口摂取では間に合わないほどの貧血の場合に使われます。
これも行われて当然の行為です。
ところがそれを、
医師の判断ではなく指導者や選手や親の方が希望して、
行うケースがあると。
これは問題ですね。
血液中の鉄分が増えると酸素の運搬能力が増すので、
心肺機能が高まり競技力が向上します。
その効果を求めて、
必要以上に「鉄剤注射」をするわけです。
鉄分を過剰に摂取すると体内に蓄積し、
肝臓などに機能障害を引き起こす場合があります。
実際に後遺症で苦しんでいる選手もいるそうです。
長距離選手は血液中のヘモグロビンが壊れやすく、
貧血になりやすいのです。
女子の場合は生理で血液を排出するため、
男子選手よりもさらに貧血のリスクが高くなります。
それでも、
できれば栄養を十分考えた食事で鉄分を取り、
足りない部分をサプリメントで補う程度にしてほしいですね。
医者が「必要だ」と認めた場合はもちろん別ですが、
不自然な「鉄剤注射」をしなくても走り続けられるよう、
指導者の方も選手本人も気をつけて欲しいと思います。
「競技力向上」という言い方をすると、
さもそれが選手のためであるかのように聞こえます。
でも本当に選手のためでしょうか?
長い目で見て本人のためになっているでしょうか?
本人がそれを望んでいるのでしょうか?
選手個人は自分自身の人生のために生きています。
幸せに生きるためにその競技をやっているのです。
指導者の満足のためでも学校の名前のためでもありません。
指導者の方には、
今、勝つことのみを追求するのではなく、
勝つことによって選手本人が幸せになるかどうか、
を考えていただきたいと切に願います。
選手の皆さまには、
好きで、望んで、その競技に打ち込んでいられますように。
苦しいことがあっても競技を楽しんでくれますように。
今も、将来も、ずっと幸せでいられますように。
と、強く強く願っています。
まじめ・前向き・一生懸命が、もっと輝くように。