「競技能力だけではない何か」を学んでほしい。
柔道日本代表の井上康生監督が言っておられました。
やはり、人間力の上に能力ですね。
さすが、世界を制した方です。
代表選手たちに柔道以外のさまざまなことを体験させています。
柔道以外の「道」に関しては茶道や書道を体験。
「道」と名のつくものは柔道と同じ終わりのない道を究めること捉え、
何か結びつくものがあるはずだと。
本当にそのとおりですね。
どんな「道」であるにしても、
「道を究める」人たちには共通の何かがあると思います。
また、「動」とは逆の「静」の世界を知ることで、
何かが得られるはずだと考えておられます。
私も茶道をやったことがあるのですが、
昔から変わることのない「所作」にはそれ相応の意味があります。
一切の無駄を省き、必要最小限にまでそぎ落とされた、
「引き算の美学」とでもいうのでしょうか。
静かに集中することは、「ゾーンに入る」ことにも似ている気がします。
「道」と名のつくことは概ね日本が発症であり、
考え方や理念が一般的なスポーツと少し違います。
それが、「道」の「道」たる所以です。
日本の柔道が「一本」にこだわるのもその表れだと思います。
それが「良い面」になる場合ももちろんあるのですが、
ともすれば狭い世界の中だけの考え方になりがちです。
井上監督の考え方は一味違います。
柔道以外にもいろいろなことを体験し、
そこで学んだ事を柔道に活かして欲しいと考えておられるのです。
素晴らしいことですね。
陶芸の体験もしていました。
日本の陶芸は世界に誇れるものであり、
日本人の強みという原点に戻りたかったと。
陶芸はすこしでも気を抜くと潰れてしまうので、
緊張感や集中力を養うのにもよかったと選手の方も言っていました。
井上監督を観ていて尊敬するのは、
選手と一緒に自分も同じことをやっているところ。
ご自分も、「柔道だけではない何か」を学ぼうとしておられるのですね。
率先垂範という言葉がありますが、
やはり「上」に立つ人間が率先して見本を見せると、
人は納得してついて来ると思います。
自衛隊の訓練で、選手と一緒に高いところから飛び降りたり、
雨の中で泥だらけになりながら匍匐(ほふく)前進したりと、
一歩間違えれば『パワハラ』になるようなことも、
ご自分が率先して参加されることで、
「井上監督もやっておられるのだから」
と選手も真剣に取り組むようになるのです。
監督の人間力が選手を育てていると言っても過言ではありませんね。
世界選手権では個人で金4個、銀6個、銅5個、合計15個のメダルを獲得。
最終日の混合団体戦では決勝でフランスに勝って3連覇を達成しました。
世界の強豪国が力をつけ、日本に肉薄してきてはいますが、
競技能力だけではない何かを身につけ、
日本代表はしっかりと結果を出しています。
東京オリンピックが楽しみですね。