手で打つな、心で打て。
剣道の教えです。
現代の剣道は「竹刀」という竹でできた刀の代わりのもので行いますが、
そもそもの発祥は本当に切れる刀での『真剣勝負』です。
負けることは「死」を意味する訳ですから、
生半可な気持ちで『真剣勝負』はできないのです。
そういう元々の考え方が剣道の教えの中に今も受け継がれています。
「心で打つ」とはどういうことでしょう?
強い気迫で打つ。
相手に気合で勝つ。
というようなことですね。
正確に言うと、このお話には途中があります。
1.手で打つな、足で打て。
剣道は竹刀を持って相手の面や小手を打つのですが、
手だけで打ってはいけないよということです。
剣道をしたことのない方にはわかりにくいですね。
例えばフェンシングの場合だと、
「先に相手の身体に当たれば勝ち」
なので、剣の先が相手の身体のどこかに触れると、
その瞬間にランプが光ってポイントが入ります。
剣道は先に当たったとしても一本取れるとは限りません。
手だけで打っても足の踏み込みがないと一本にならないのです。
一本になるかどうかは審判の方の主観で決まります。
何だかわかりにくいなぁ…と、思われたら、
他のスポーツの指導の場面を考えてみて下さい。
例えば、
野球のバッターはピッチャーの投げた球を打ちますね。
バットを辛うじて球に当てただけでは球の威力に跳ね返されます。
指導者の方が選手に、
「手打ちはダメだ」
と言ったりしますね。
剣道の判定もそれと同じような意味だと考えてください。
2.足で打つな、腰で打て。
足が出ていたとしても、
ちゃんと腰が入っていないと一本になりません。
竹刀は相手の面に当たっている。
足も踏み込んでいる。
でも、腰が引けていて体勢が整っていないと剣に威力がないので、
それでは一本取れないよということです。
またまた野球で言うと、
腰が入ったスイングでないと鋭い打球が飛ばないので、
指導者の方が、
「腰を入れろ」
と言ったりしますね。
同じようなことです。
3.腰で打つな、心で打て。
たとえ剣が相手の面に当たり、体勢が整っているとしても、
気合が充分でないと一本にはなりません。
というよりも、
そもそも相手を圧倒するぐらいの強い気迫で臨まないことには、
強い相手に対して自分から打っていけません。
まず気合で攻めて相手の気合を砕きなさい。
ということです。
野球に例えるとするならば、
「相手ピッチャーにビビるな!」ということでしょうか。
何百年と続く勝負の歴史の中で生まれた言葉には、
単なる精神論を超えた勝負事の極意が散りばめられています。
スポーツでもレベルが上がれば上がるほど、
心の要素が勝負を左右することが多くなりますね。
あなたは心で打っていますか?