「先頭にはもう追い付けない。このまま抜かれなければ2位に入れる。」
と、思ったのでしょうか。
極限の疲労とギリギリの緊張感の中で、
たぶん無意識に振り返ってしまった大迫選手のほんのわずかの弱気。
その行動を、服部選手は見逃しませんでした。
それが服部選手を勇気づけることになりました。
最後の最後、ゴールインするまでは、
心の中を表に出してはいけないのですね。
どんなに苦しくても前を向いて走らなければならない。
それがマラソンという競技なのだと、改めて実感しました。
正にメンタル勝負ですね。
マラソンという競技の奥深さ・面白さをまた発見してしまいました。
スタートから飛び出す勇気。
安易に揺さぶられない忍耐力と慎重さ。
レース展開を予測し、レースを組み立てる予測力。
ラストで勝負する自信。
周りに影響されない自己コントロール力。
「ここ!」というところでスパートをかける判断力と決断力。
最後まで諦めない闘争心と勝利意欲。
レース中の行動のすべてが心の強さを必要としています。
どこか一つでも弱さがあると、そこからほころびが生じます。
メンタルの要素のすべてを鍛えてゆかなければならない競技ですね。
今回の東京五輪マラソン代表選考会MGCは、
マラソンファンにとっては本当に面白いガチンコ勝負でした。
面白いという言い方は、選手の方たちに対しては申し訳ない気もします。
でも、面白かったのです。
そして、誰が見ても納得できる選考会だったと思います。
どの選手もどの選手も、
苦しい練習を乗り越えてスタートラインに立ちました。
それぞれに「強い思い」のある勝負だったはずです。
それでもやはり勝ち負けは生まれます。
残酷ですが、
勝負して負けたのであれば納得はできたのではないでしょうか。
レース前には誰もが強気の言葉を口にします。
すでに勝負は始まっているからです。
2位でも代表になれる!
とリラックスして臨んだ人も、
この中で2人しか選ばれない!
というプレッシャーと闘っていた人もいたことでしょう。
「本当はどんな心持ちで当日のレースに臨みましたか?」
と、一人一人にこっそり聞いてみたい心境です。
涙が出るほど怖かった!
緊張しすぎて食べ物が喉を通らなかった。
そんなこともあるかもしれませんね。
ラスト200mで大迫選手を抜き2位になった服部勇馬選手が、
レース後に語っていました。
前を行く大迫選手が後ろを振り返ったのを見て、
「もしかしたらチャンスがあるかも」
と思ったと。
もし、大迫選手が振り返らなかったら、結果はどうなっていたでしょう?
男女の代表各2名は内定しました。
でも、まだ選考は終わっていません。
あと1枠ずつ残っています。
まじめ・前向き・一生懸命が、もっと輝くように。